とざい東西~お江戸日本橋千両商い絵巻 [中央区]
吉原、歌舞伎と並んで
「日に千両落ちる」大商いが行われていたという、日本橋の魚河岸
そんな活気に満ち溢れた(今から210年前)頃の
お江戸日本橋を俯瞰描写した・・
「熈代勝覧」(に、描かれている人物&解説文)を、コンプリートしてきました☆
「熈代勝覧(きだいしょうらん)」原画:ベルリン国立アジア美術館所蔵/絵師:不明
場所:東京メトロ「三越前」駅の地化コンコース通路に、ででで~ん!と17メートル常設展示
時は、11代徳川家斉の世の、文化2年(1805年)
場所は、大江戸八百八町のなかでも
とりわけ名高い「日本橋」・・・・
「熈」(かがや)ける御「代」の「勝」れたる大江戸の景観を、とくとご「覧」あれ
●押送り船・・・・・・・・・・押送り船とは、房総あたりの近海魚を
活きのよいまま魚河岸に直送した、六挺櫓の高速艇
お江戸ならではのこと
●魚の立売・・・・・・・・魚河岸で仕入れた魚介類を目抜き通りで早速小売り
あれもこれも活きがよくって
旨そうな魚を物色
●鰹の立売・・・・・・・・・・「目に青葉山時鳥初鰹」と詠まれた初鰹
江戸っ子は初物食いに四季を味わった
活きのよい鰹を商う魚市場の傍
●屋台の茶屋・・・・・・・・・・現代のオープンカフェ
市松模様の屋根は、簡便な可動式床見世のサイン
美人の接客に鼻の下を長くする客
●辻駕籠(つじかご)・・・・・・・・・吉原等の遊里通いや遠出の時に町人が用いた乗物
辻などにたむろして客を待つ
乗り心地はあまりよくない
●飛脚・・・・・・・・・飛脚は、取次ぎ問屋の立場(たてば)に持っていけば
届け先の所在と名前を伝えるだけで
確実に届けてくれる宅配制度
●牛車・・・・・・・・・・江戸は急な坂や太鼓橋が多い都市で
材木や石材、米俵のような重いもの
あるいはかさばるものは牛車で運んだ
●地行と木遣り・・・・・・・・・地行とは家普請の字固め
太い杭で地を突き固めるのは鳶の衆
縄を引っ張る調子合わせに唄うのは木遣
●読売・・・・・・・・・・辻で深編笠をかぶり
事件や政治風刺を刷った
最新情報の瓦版を読み上げる二人は読売
●貸本屋・・・・・・・・・・江戸時代本は高価だったので
貸本業が盛んとなり、行商の貸本屋が持ち込む本で
教養や娯楽の糧とした
●鮓(すし)売り・・・・・・・・・・鮓といえば押鮓や稲荷鮓が主流の時代
こうした鮓を箱に詰めて仕出しをしたり
往来で立売、行商して歩く
●菜売り・・・・・・・・・・神田のやっちゃば(青物市場)で仕入れた
茄子や大根、青菜を商う棒手振(ぼてふり)
日本橋へ来れば何でも間に合う
●付木売り・・・・・・・・・・付木とは、松や檜の剥板の先に
硫黄を塗ったもので、火を移すのに用いる
燐寸(マッチ)の前身
●保命丹(薬)売り・・・・・・・・・・両架けの箱の外覆いに
「保命丹」という薬名がわずかに見える
江戸では諸国からの薬種が取り扱われた
●反古紙(ほごがみ)買い・・・・・・・・・・不要となった帳面や手紙
瓦版や読本などを買い入れた
この紙を漉きかえして再生紙をつくり有効資源活用
●三井越後屋・・・・・・・・・・江戸店(だな)でも随一の呉服商・三井家の越後屋
立看板に「現銀無掛直」とあり、掛売が通例の世に現金商法を打ち出し
また店先売りで大当たり
国元の本店から派遣された、男所帯の江戸店の典型
●蒲鉾つくり・・・・・・・・・・鮫などの白身魚を擂りつぶして
板に塗りつけ蒸したのが蒲鉾
魚河岸近くの室町なので「神茂」の前身か
●鏡師・・・・・・・・・・店先で鏡を磨く職人
青銅製に錫をメッキした鏡面を
仕上げ磨きにザクロの実から作った酢を用いたという
●回り髪結・・・・・・・・・・路地口を入ろうとしているのは
鬢付盥(びんつけたらい)を持った回り髪結
衣食のみならず髪結までが出前する、快適な都会暮らし
●十軒店の雛市・・・・・・・・・・春になると外売りの雛人形の仮店が並び、市が立つ
江戸の春の風物詩のひとつ
縁起物の値段は交渉次第
●搗(つき)米屋・・・・・・・・・・幕府御米倉の米は
札差(ふださし:米商人)を通じて御家人たちに換金され
江戸っ子の主食となった
その米を、臼と杵で精(しら)げる仕事
●江戸患いの台車・・・・・・・・・・十軒店の雛市に出てきた台車に乗った人
江戸っ子は白米を日常食としたため
江戸患いといわれた脚気病みか
●按摩・・・・・・・・・・杖をつき、笛を吹いて客を誘うのは流しの按摩の二人
呼ばれれば鍼灸やマッサージで
心身の病を治す
●菓子の立売・・・・・・・・・・大きな日傘に商標を付けた立売の菓子屋
売るのは団子か饅頭か
紙袋を膨らませる顔の表情がユーモラス
●手遊(てあそび)売り・・・・・・・・・・手遊とは子供が手に玩ぶ遊具
猿の木登り、でんでん太鼓
稲荷の旗などを売り歩く
●猿回し・・・・・・・・・・大道芸の猿回しの猿に吠えかかる犬
まさに「犬猿の仲」を示したハプニング
「江戸に多きもの伊勢屋稲荷に犬の糞」と言われたように、市中に多い犬
●鷹匠・・・・・・・・・・将軍家の鷹匠が鷹を手に
喧騒な大通りを行くのは
神経の繊細な鷹の、調教の最後の仕上げのため
●箍(たが)屋・・・・・・・・・・水桶・手桶・飯台・樽などの修理には
竹を割って作る箍で締めた
生活道具に桶などが増え、箍屋も大忙し
●虚無僧(こむそう)・・・・・・・・・・虚無僧は有髪の普化宗の托鉢僧で諸国行脚
天蓋(深編笠)に袈裟を着け
尺八を吹く門付でお布施を乞う
●日本橋川での水遊び・・・・・・・・・・日本橋川を見やると
盥(たらい)を舟にした幼児と水面を泳ぐ子供の姿が
大江戸の豊かな生活がうかがえ微笑ましい
●寺子屋入門・・・・・・・・・・寺子屋(稽古所)へ入門するための
机を担いだ父親に手を引かれる子
遊び盛りで、いやじゃと腰は引けている
●喧嘩・・・・・・・・・・「火事と喧嘩は江戸の華」といわれたように
魚河岸の近い日本橋あたりで
棒手振(ぼてふり)同士の喧嘩の真っ最中
●いい機嫌の町歩き・・・・・・・・・・扇子を頭にかざして、ほろ酔い機嫌で町歩きの旦那
着飾った連れの女性たちと
繁盛する大通りを談笑しながら漫遊
●日本橋上の武家の一行・・・・・・・・・日本橋上の橋のまんなかに、武家の一行が象徴的に登場
轡(くつわ)取りを先頭に、騎上の武家、槍持
鋏箱持、合羽籠持、歩行(かち)で従う家臣たち
絵巻のなかで生き活きと息づく1671人の身分も職もさまざまな人々と
犬20匹、馬13頭、牛4頭、猿1匹、鷹2羽
もし、この時代に生きるとして
自分はどの職業に就いてたかナーと想像すると。。。
白身魚をすり鉢で嬉しそうに練り練りしてる「かまぼこ職人」が、いいかなぁ^^
2015-05-09 10:00
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コメント(22)
1671人の身分も職もさまざまな人々と
犬20匹、馬13頭、牛4頭、猿1匹、鷹2羽の大絵巻。
あれだけの要素を描いたことに敬服します。
美人おかみのいる屋台茶屋で、まったりしてみたいものです。
by cafelamama (2015-05-09 11:22)
今から210年くらい前なのに、現代とは着ている物や使っている物が全然違うのに驚きです。けど、仕事して娯楽を楽しんでと生活の根本みたいなのは、一緒かなぁとも思ってしまう。
蒲鉾職人は、なかなかいい選択ですね(^^♪
by ばー助 (2015-05-09 14:41)
はなだ雲さんは,虚無僧を選ぶかと思ってた。
それにしても,1671人もの人物を見事に描き分けていて,皆活き活きと描写されているって,すごいことだよなぁ~♪
by こじろう (2015-05-09 17:31)
味のある絵ですね~。
やはり私は「二八そば・うんどん(?)」の看板に反応してしまいます。
衛生面にちょっと不安はあるものの、この時代のファストフードが食べてみたいです。
by yes_hama (2015-05-09 21:44)
自分に何が出来るか……
虚無僧かなぁ〜。
by 山子路爺 (2015-05-09 22:37)
江戸って、世界的にも大都会。しかもこんなに活気に満ちた都市は他に無かったかもね。
これほど多彩な職業があったのも驚きです。
私としては、浮世絵師にでもなれたら嬉しいのですが・・・(^_^ゞ
by 路渡カッパ (2015-05-10 00:26)
僕は押送り船です、もちろん!
超ダラダラ漕ぎますよ(笑)
魚腐るわな(>_<)
by ちくわ (2015-05-10 13:53)
こんにちは。その頃は活気があったんですね。日本橋、いまはビルの谷間になってしまったけど、その頃は地べたを走り回る忙しい毎日だったんですね。わたくしだと、蒲鉾をこねるのが向いているのかもしれません。あとは手遊び売り……が出来そうです。これは長尺の巻物のような絵ですよね……? ひとコマずつ切り取って見せてもらい、たのしく拝見しました。
by ikamasa (2015-05-10 15:22)
この頃の職業は随分と細分化かつ専門化されているんですねえ。
1年くらい前に、オックスフォード大学が「現在の職業の47%が10年後には無くなっている」なんて発表しましたが
この絵に描かれた職業がどうなっているかを考えると、納得出来ちゃいますね。
>白身魚をすり鉢で嬉しそうに練り練りしてる「かまぼこ職人」が、いいかなぁ^^
俺は、いい機嫌の町歩きがいいです。
って、職業じゃないね(笑
by すぴーどきんぐ (2015-05-10 16:26)
こんにちは。
これはまた、すごい描写ですね。いえ、絵巻はもちろんのこと、はなだ雲さんの写真です。こと細かな解説に、うなづきながら、感心しながら楽しませていただきました。すごいすごい。
by sig (2015-05-11 07:50)
かまぼこ職人がいいでやすか、なるほど~
あっしは殿様がいいでやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2015-05-11 19:06)
面白い!これだけの解説つけるのはさぞかしご苦労されたと思います。
お疲れ様でした。
蒲鉾職人いいですね。江戸って感じです。福岡出身のカミさんは「東京のおでんは練り物ばっかりだ」と言ってましたww
わたくしは越後屋の若旦那になって毎日吉原で豪遊したいっす!!
以前、杉浦日向子さんの「江戸へようこそ」という本を読みましたが、江戸時代の風俗をわかりやすく解説していて面白かったです。
もし良ければ手に取ってみてください。
by masa (2015-05-11 22:18)
cafelamamaさん、こんばんは
熈代勝覧は、ほんの20年前にドイツの個人宅の屋根裏で発見されて
最初は、中国美術として保管されてたそうです
こんなに力作で貴重な資料が、奇跡的に見つかって
日本橋にお里帰りできて、ほんとうによかった(複製画だけど)
「美人おかみ」、そこは外せない、重要なファクタなんですね笑
ばー助さん、こんばんは
江戸っ子は宵越しのカネは持たないので
働いた分は、きっちり遊んで
それで江戸の景気は回っていたのかも☆
ばー助さんも、いつも連休は散財されて
景気を回していらっしゃいますしネ^^
かなぼこ職人さんの、嬉しそうな顔がイイんです笑
こじろうさん、こんばんは
虚無僧は、諸国行脚で寝床が決まってないのが
けっこうキツイなあと、却下いたしました!
行商も立売も体力的にキビシそうだし
大店に雇われてる職人がいちばん安定してるかなぁと
「安定性」で、かまぼこ職人を選びました☆
1671人描き分けるって、、スゴイですネー
yes_hamaさん、こんばんは
二八そばの看板の下に、確かに書かれてますね「うんどん」
うどん・・・ですかね
この頃の蕎麦やうどんって、どんな出汁だったんでしょう
こんぶやカツオやいりこ出汁は、もう開発されてるのかな^^
山子路爺さん、こんばんは
山子路爺さんは、山登りやまち歩きで慣れていらっしゃるので
諸国行脚の虚無僧、イケるとおもいます!
ただし、この時代、偽物の虚無僧も多かったので
尺八の練習はキチンとしておかないと、怪しまれるとおもいマス^^
路渡カッパさん、こんばんは
世界レベルっていわれるほどの大都市だから
職業もコト細かく分かれてて、役割分担されてたのかなぁ
おお、世界を魅了する浮世絵師!ちょうかっちょいい☆
by はなだ雲 (2015-05-12 00:37)
うわお、大作!! 一つ一つ楽しんで拝見しましたー。これって今でいう風景写真ですよね♪
江戸時代の人も、自分と同じように、美味しいもの食べて喜んだり、友と笑い合ったり、生きるために働いていたりするんだなーと、不思議な気持ちになりました。
しかし、やはり東京は中央区! こういうの拝見するたびに「歴史あってクール」だと惚れ惚れします!
by 新宿鳥 (2015-05-12 20:47)
ちくわさん、こんばんは
千葉の房総あたりから日本橋へ
お魚を超高速レガッタで運んでたんですネ~この時代
6人のチームプレイなので、1人だけダラダラは漕げないかもよ^^
ikamasaさん、こんばんは
現代とは違って、地べたにシッカリ足の着いた毎日だったのですネ
ikamasaさんも、かまぼこ職人ですか
この時代に生まれてたら、わたしたち同僚ですね!
17メートルの絵巻物を、解説文ごとに細かく切り取ってみました^^
画像がイマイチで、見づらかったと思いますが、
根気つよく最後まで見て頂いて、ありがとうございました☆
すぴーどきんぐさん、こんばんは
職業がみごとに細分化&専門化されてますね^^
現在ある職業の半分近くが、10年後には消失するんですか!
・・あせっちゃいマスー
いまのままでは時代に取り残されるから
生き残りをかけて、時代に合わせて変化していかねば!なのか~☆
あははっ、いい機嫌の町歩きの旦那が
わたしもこの絵巻物のなかで一番うらやましかったデース^^
by はなだ雲 (2015-05-13 23:23)
sigさん、こんばんは
画像イマイチだし・・正直、コンプリートしただけのオリジナリティのない記事ですが
労力だけはかかったので、お褒めいただけてとても嬉しいです♪
「虚無僧」の写真が気に入らなくって
翌日もう一回、日本橋へ行って撮り直して来たりして
実はめちゃくちゃガンバったのでした☆
ぼんぼちさん、こんばんは
おーでた、殿様!
究極~☆
masaさん、こんばんは
解説は、展示物に書き込んである文章を
そのまま入力しちゃいました、丸パクリなのデス(エヘ)
そうそう、練り物の「おでんタネ」といえば
東京にきて始めて見た「ハンペン」と「ちくわぶ」!
なんじゃこりゃって思いました
同郷あるあるで、奥さまと盛り上がれそう♥
「越後屋の若旦那」、ベストチョイス笑
わぁなつかしい、杉浦日向子
たぶん数冊押し入れの奥に眠ってるハズだけど
「江戸へようこそ」あったかなー、これを機にまた手にとってみようかな
新宿鳥さん、こんばんは
スクロールするの大変だったでしょう笑
お忙しいなか、長々しい記事を、最後まで見てくださって
ありがとうございます☆
これは写真が無かった時代の風景写真かもしれませんね^^
絵巻に描かれてるひとりひとりに注目していくうちに
日に千両動く、江戸時代の日本橋魚河岸のパワーを
実感できた気がいたしました
中央区は・・・・クールですよね、私も惚れ惚れです♪
by はなだ雲 (2015-05-14 23:46)
ほうぅ、絵図が今に伝える江戸の暮らし。その時代に生きてないのに懐かしさがこみあげてくるな。
by さきしなのてるりん (2015-06-25 12:28)
てるりんさん、こんばんは
生まれるずっと以前の時代なのに
親近感がわくのは、きっと「絵ヂカラ」ですね♪
by はなだ雲 (2015-07-11 03:51)
佐賀県の多久市郷土資料館の藤井といいます。
このサイトで使用されている「熈代勝覧」の飛脚について、
本館の展覧会の展示室内で参考資料として使用したいのですが、
可能ですか?
「熈代勝覧」の複製画を作成した名橋「日本橋」保存会に
問い合わせたところ、ベルリン国立アジア美術館との協定で
デジタルデータは所蔵していないとのことでした。現地で
撮影した分は出典を明記すれば可能とのことでした。
そこで、このサイトの写真をプリントスクリーンで使用したい
のです。返事をよろしくお願いします。
by 藤井伸幸 (2018-11-28 15:22)
藤井伸幸さま
わたしのほうは問題ありません
どうぞ使ってください
わざわざご連絡ありがとうございます
by はなだ雲 (2018-11-28 20:11)
返事をいただき有難うございました。
次のように記載する予定です。不都合があればお知らせください。
飛脚「熈代勝覧(きだいしょうらん)」より
ベルリン国立アジア美術館所蔵 名橋「日本橋」保存会複製
東京メトロ「三越前」駅の地下コンコース壁面
画像https://hanadagumo2.blog.so-net.ne.jp
by 藤井伸幸 (2018-12-02 14:43)
藤井伸幸さま
ブログアドレス記載していただけるのですか?
ご丁寧にありがとうございます♪
不都合はありません、宜しくお願い致します
by はなだ雲 (2018-12-02 16:20)