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書物のなかの葛飾北斎 [文京区]

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あの絵はないけど、これがある!!

文京区駒込にある東洋文庫ミュージアムで開催されてる
「東洋文庫の北斎展」へ行って来ました

   会期:2019年10月3日(木)〜2020年1月13日(月・祝)

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北斎の人生と作品にフォーカス
    「北斎」エドモン・ド・ゴンクール/著 1896年 パリ刊
 フランス語の北斎の伝記です。巻頭の北斎晩年の肖像画は、彼の娘で絵師の葛飾応為(阿栄)
 が描いたものの複製です。巻末には主要作品目録が付けられ、当時の西洋で北斎作品に
 対して高い関心が払われていたことをうかがわせます。著者は弟のジュールと共に、18世紀の
 風俗研究や社会小説に関する著作を多数発表しました。ジュール亡き後は日本美術に関する
 著作を発表し、ヨーロッパに浮世絵を広めた人物の一人として知られています。



この展覧会に冨嶽三十六景や肉筆画は展示されていませんが

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北斎を紹介する海外の書物、黄表紙の挿絵、狂歌絵本など
「こんな作品も描いていたのか」っていう視点で
天才絵師・葛飾北斎の画業を鑑賞することが出来ます

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これぞ至高の北斎デッサン集。
    「北斎写真画譜 (布袋)」葛飾北斎/画 1814年
  人物、草花、動物を繊細な描写で描き、水彩の味わいを感じさせる淡彩で摺った
  15図からなる一冊です。空摺りやぼかしといった高度な摺りの技術が使われています。
  東洋文庫が所蔵しているのは、1814年に平由豆流という国学者・歌人によって
  制作・自費出版されたものです。オランダ商館医のシーボルトが持ち帰ったコレクション
  のなかには本書が含まれていました。また、西洋の美術評論家からも高い評価を得ています。


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師匠もすごい!
   「錦百人一首あずま織」勝川春章/画 1775年
 『百人一首』に収録されている歌人の肖像に、それぞれの歌を添えた絵本です。
 本書が刊行された数年後、北斎は春章に入門しました。
 歌仙の肖像は古くから絵画のテーマとされましたが、春章はこれまでの定型通りに描くのではなく、
 立ち姿や動きのあるポーズを多く取り入れ、表情にも歌仙の個性が出るよう工夫しました。
 本書は大好評だったようで、明治時代までに様々な版が刊行されました。


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この動物トレビアン!描いたのは誰?
  「日本、中国、インドに関する覚書」シャルル・ド・シャシロン著 1861年 パリ刊
 19世紀後半のインドと極東の見聞録です。シャシロンは1858年に初来日したフランス外交団の
 一員でした。本書には、彼が江戸で購入した『北斎漫画』や『北斎画譜』から採った図版が
 掲載されていますが「北斎」の名前は記されていません。
 一方、本書刊行前に既にフランスで浮世絵が流通しはじめていたこと、それ以前にも北斎の名を記した
 書物が西洋に存在したことなどから、北斎の受容にはいくつかの流れがあったことがわかります。


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行ったことないけど、魅かれてるんです
   「日本美術瞥見」ジャーヴス著 1876年 ニューヨーク刊
 アメリカで出版された、日本美術を本格的に扱った本です。
 ジャーヴスは美術評論家でありコレクターですが、来日経験はありませんでした。
 本書では北斎の独創性を高く評価し、前世紀の最も偉大な画家だと述べています。
 挿絵には、雪遊びをする子供や豆まきなどの日常風景から、鼻で荷物を担ぐ天狗という
 ユーモラスなものまで、『北斎漫画』から借用された図版が多数用いられています。


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圧倒的構図力!圧倒的迫力!
   「新編水滸画伝」曲亭馬琴・高井蘭山/作 葛飾北斎/画 1805‐1838年
 中国四大奇書の一つである『水滸伝』を翻訳して制作された、全90巻に及ぶ
 大長編の読本です。馬琴・北斎コンビ作としては2作目です。
 本作で北斎は、ぼかし表現を用いて雲や場面の空気感を描いたり、時には龍、岩、剣などを
 枠外に飛び出させる奇抜な構図でインパクトのある場面をつくりました。
 こうした挿絵が人気となり、庶民の間で『水滸伝』が普及したと言われています。


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中国風武者絵の決定版
   「忠義水滸伝画本」前北斎為一(葛飾北斎)/画 1829年 
 曲亭馬琴『新編水滸画伝』へ挿絵を提供した後、北斎は108人の豪傑のみを描いた本書を
 出版しました。江戸時代、水滸伝の人気は相当のものでした。お上の腐敗を庶民が正す、
 いわば世直しの物語であるところが、当時の庶民感情にマッチしたからだと考えられます。
 後に歌川国芳も浮世絵シリーズ「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」を出版し、
 こちらも大ヒットしますが、そこには北斎の描いた豪傑像からの影響が多くみられます。


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聞こえますか・・・木霊です・・・
   「三七全傳南柯夢」曲亭馬琴/作 葛飾北斎/画 1808年
 『椿説弓張月』『南総里見八犬伝』と並び、馬琴の三大傑作読本の一つとされる作品です。
 中国の小説『南柯記』に、歌舞伎や浄瑠璃でなじみ深い「三勝半七の情死事件」という実話を加えています。
 展示ページは楠のうろに棲む木霊と奈良の三輪山から来た木霊が会話する場面です。
 その挿絵で、北斎は植物にも霊が宿ることを示し、また生物のように波打つ老木を描くことで、
 自身が馬琴と共有するアニミズムを表現しています。


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他人に不足を感じるのは、自分を完璧と思いたいから
   「兒童文殊稚教訓」時太郎可候(葛飾北斎)/作・画 1801年
 北斎が戯作者「時太郎可候」の画号で出版した黄表紙です。
 「人間にしてほしい!」と文殊菩薩に頼み込んだ、鼻が欠けた三千匹の猿たち。
 生まれ変わっても、やっぱりどこかが違う?いやいや、自分の心を養えばきっと
 彼らの本当の姿が見えてくるはず。ところで、本作の中には、北斎自身も登場します。
 「へく齋」「くたさくしゃ可候」などという自虐に、北斎の遊び心がうかがえます。


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江戸時代がリアルに迫ってくるような臨場感
   「絵本隅田川両岸一覧」葛飾北斎/画 刊行年不明 1917年復刻
 93回も引っ越しを繰り返した北斎ですが、引っ越し先はほどんどが現在の墨田区内です。
 そんな北斎にとって、隅田川は最も親しんだ景色であったことでしょう。
 生涯「水」の描き方を追求し続けた北斎の原点は、隅田川にあるかもしれません。
 本作は、隅田川両岸の風景、風俗を下流から上流へ、年始から年末へ季節の移ろいとともに
 描いた北斎の絵に、さまざまな狂歌師による狂歌が添えられています。
 東洋文庫が所蔵するのは1917年の復刻本です。


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江戸の名所がずらァり、ずらり
   「東都勝景一覧」北斎辰政(葛飾北斎)/画 三井親和/書 1800年
 初めは『東都名所一覧』というタイトルで出版されていた、色摺狂歌絵本です。
 『畫本東都遊』の元である『東遊』に続いて作られました。品川・日本橋・両国・浅草など
 21のスポットをとりあげ、挿絵は全てを北斎が描きます。こうした江戸の勝景(名所)を
 題材とする狂歌絵本は、喜多川歌麿や歌川豊国らもすでに手がけており、当時の庶民の間で
 行楽が盛んであった背景もうかがわせます。


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見つめられてる・・・、見つめてる・・・。
   「画本東都遊」浅草菴/作 葛飾北斎/画 1802年菴
 1799年に出版された狂歌絵本『東遊』のなかから、北斎の挿絵部分を抽出して色摺りにし、新たに出版
 された名所絵本です。全29図を収録し、江戸の景観だけでなく当時の庶民風俗もあわせて楽しめます。
 右側のページには、現在の日本橋中央通り近辺にあった「長崎屋」に宿泊するオランダ商館の一行を
 物珍しそうに眺める江戸庶民の姿が描かれています。
 長崎屋は日本人とオランダ人との交流の場となり、商館医のシーボルトもここに訪れたと言われています。


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江戸時代のブックカバー
   「書物袋絵外題集」葛飾北斎ほか 1786~1868年
 店頭に並ぶ本を保護するための覆い紙「袋」に描かれた絵を集めたアルバムです。
 全311図あり、袋から本の作者、挿絵を担当した絵師、出版年などの基本情報が分かります。
 中の書物にくらべ、袋は捨てられることが多かったのか、まとまった形で残っている例は
 ほとんどありません、当時の大衆の好みや販売の工夫がうかがえ、眺めるだけでも楽しめます。
 展示箇所(左側)は1808年に出版された合巻(長編小説の一種)の袋です。


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こういうのも手がけていたのか・・・
   「番組ほか大型摺物」画狂人北斎、かつしか北斎(葛飾北斎)/画 19世紀前半
 常磐津や長唄のお浚い会(芸事の稽古の成果を披露する会)の案内と番組(演目のリスト)です。
 大奉書という縦約39cm、横約53cmの紙を二つ折りにし、絵と文字情報を半々に摺っています。
 展示している4点はいずれも「葛飾北斎」と名乗る前後に描かれたと考えられます。
 錦絵や絵本などとくらべると残存数が少ない、珍しい作例です。可憐で愛らしい人物、抒情性と品格、
 ときにユーモアを感じさせる場面描写など、後年の北斎作品に見られる迫力ある画風とは趣の異なった
 魅力が楽しめます。


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もっと描きたい富士山
   「冨嶽百景」画狂老人卍(葛飾北斎)/画 1834‐35年頃
 北斎の最も有名な作品『冨嶽三十六景』から数年後、まだ描き足りないとばかりに
 富士山の神話から風景、各地の風俗などを交えて102図を描いたものです。
 北斎は50代の頃から何度か関西方面へ旅をしています。75歳の時に描いた本作には、
 各地で実際にみた富士山がベースになっている図もあることでしょう。
 作画が素晴らしいのはもちろんのこと、本作で特に知られているのは、図画への
 あくなき意欲を記した後書きです。


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その筆力、衰えることを知らず!
   「釈迦御一代記図会」好花堂野亭(山田意齋)/作 前北斎卍老人(葛飾北斎)/画 1845年
 北斎が挿絵を手がけた読本のなかで最も遅い時期の作例です。物語は釈迦の生涯をテーマとする
 「仏伝」とよばれる文献をもとにし、挿絵には、仏伝図とよばれる伝統的な画題に加えて、
 北斎の発想によって描かれたと思われる図も多いです。また、繊細かつ表現力ゆたかな筆線、
 モノクロであることを忘れるほどに印象的な白と黒のコントラストも見所といえるでしょう。
 本作では、80歳を超えた北斎の衰えぬ筆力と発想力を存分に楽しむことができます。




行楽日和の秋の一日、北斎のデッサン集を片手に
江戸時代の江戸の町を小旅行してきたような気分になれて
とても好きな展覧会でした



「葛飾北斎/諸国滝廻り‐木曽路ノ奥阿弥陀ヶ瀧‐」デザイン
重ね押しスタンプがあったので、せっかくなので押してきました
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スタンプ1色目
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2色目                    3色目
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4色目                    5色目(完成)


こういうのって、完成品より

2・3色目あたりを摺り終わったあたりで
早く出来上がりが見たいと想像してわくわくする過程のときが一番楽しいって気が...します♪

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ぼんぼちぼちぼち

重ね押しスタンプ、愉しいこと間違いなしでやすね!
仰るとおり、途中の過程が特にわくわくするの分かりやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2019-11-17 17:23) 

Boss365

こんにちは。
北斎を紹介する書物、文字小さくで詳細全て理解していませんが・・・
グラフィックデザイナー・イラストレーターそしてマルチなアーティストな感じです。
特に「江戸時代のブックカバー」は知りませんでした。
コレクションとしては貴重でビジュアル的に凝縮された印象のモノと感じます。
重ね押しスタンプ!!前ブログのハンコ繋がりですね。
完成より4色目の方が色彩的には鮮やかで良いかな(笑)!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2019-11-17 17:29) 

こじろう

はなだ雲さん,こんばんは♪
重ね押しスタンプは,3色目あたりが一番ドキドキするかも。
ここで失敗してたら,折角の滝の勢いが弱まりそうだからな。

小学生の時に八犬伝を読んで,それが切っ掛けで水滸伝を読んだら北斎の挿絵にはまった。
画狂老人卍になっても勢いが削がれないその画力には,本当に恐れ入るな。
by こじろう (2019-11-17 20:37) 

響

娯楽としての絵だったのでしょうね。
今見ても楽しい。
by (2019-11-18 11:23) 

song4u

雲ちゃん、毎度~♪
今回記事は、随分とリキ入ってますねえ。
どの部分が雲ちゃんの琴線に触れたのかなあ?
いつもとはやや違う気合いに、押されっぱなしデス。
ま、かなり嬉しかったりするけどね^^;

葛飾と言えば、北斎か寅さんですよね。
この両者がいなければ、この字は絶対読めなかったと思います。
北斎と寅さん、特に北斎には大感謝です!(笑)

さて、北斎と言えば、浮世絵。
浮世絵と言えば? 知ってるビッグネームは誰?
北斎以外だと、写楽? それとも広重? 国芳??
あとは? うーむ、すぐには出て来ませんねえ…(涙)

やっぱり一番人気は謎に包まれた写楽でしょうね。
いきなり完成形で出てきて、数年でパッと姿を消す。
こんなザ・ミステリアスをされて、人気にならないわけがない。
ぼくは「三つ目がとおる」の写楽も大好きなんですが(笑)

ぼくの貧困なイメージで言うと、写楽が役者絵なのに対して
北斎は風景画。これはもう万人共通じゃないでしょうか。
だけど北斎、風景以外にもこんなに色々と描いてたんですね。
いつもながら、まったく知りませんでした。
とは言え、やっぱり北斎は風景画のイメージだなあ。

北斎や写楽と言った特異な才能の出現もさることながら、
この時代に「木版画」という技術が凄まじく進んだことも
特筆すべきことなんじゃないかと思います。
現代で言えば、オフセット印刷にあたる当時の木版画。
この技術がなければ北斎も写楽も無かったと思いますね。

北斎、93回も引っ越ししたとはビックリです!
5回、6回ならいざ知らず、よくぞ間違えずに数えたモンですね。
余談ですが、北斎が好んだ墨田区には、我が愚息も在住です。
「緑」などと言う、全然由緒を感じない地名なんですけどね。
両国国技館や江戸東京博物館なんかは至近なんですが、
親の血を引いて、きっと行ってないんだろうなあ(笑)

PS
今日はテルテルの四十九日法要でした。
暦で言えば数日早いんですが、前倒しは吉ということで。
で、案の定呑み過ぎておりまして、ヘンなことを書いていたら
どうか平にご容赦を。
by song4u (2019-11-23 20:22) 

はなだ雲

ぼんぼちさん、こんにちは
重ね押しスタンプ、嬉々として体験してきました
よく巷でやってるスタンプラリーも重ね押しにすればいいのに^^
完成品より制作途中にわくわくするってことは
完成品に手を入れ過ぎてるってことかな笑

Boss365さん、こんにちは
文字小さくてスミマセン
読み飛ばしていただいていっこうに構いません笑
次回はぜひそうしてくださいませ♪
江戸時代の本はむずかしくてさっぱり読めませんので
挿絵をみるかぎりですが、江戸時代って
想像以上に文化レベルが高かったんだなあって改めて感じました
消しゴムはんこからの重ね押しスタンプ
偶然にもつながってます^^
ご指摘のとおり4色目がいちばん色鮮やかですね♪

こじろうさん、こんにちは
失敗すると滝の勢いが・・・!
よくよく見てみると最後の5版、ずれてますね
重ね押しスタンプで失敗するはずないと思い込んでましたが
完成品の出来がいまいちだったのは
わたしの押し方がいまいちだったせいかも★
葛飾北斎の水滸伝の挿絵、すごかったです
想像をはるかに超える構図、画面狭しと飛び出す迫力
わたしが江戸時代に生きてたら
まちがいなく北斎の追っかけやってたとおもいます

響さん、こんにちは
むかしは娯楽も限られていたでしょうから
影響力も需要もケタ違いだったんじゃないかなあと
想像します^^

song4uさん、こんにちは
今回は時間かかりました★
土曜日の朝からブログ書き始めて
日曜日になっても終わらなくてあせりました~
わたしは風景画が好きなので広重が一番好きですが
北斎の富士山もすごいとおもいます
あと北斎漫画も♪
木版でカラー印刷が普及したきっかけは
「見当」のハッケンがあったからなんですって
おかげさまで浮世絵が庶民にも手の届く価格になって
広まっていったんですね
息子さん、両国辺りにお住まいなんですか!
江戸東京博物館はともかく
親子そろってご興味ないんですか?「お相撲」
かなり意外です笑
四十九日の法要おつかれさまでした
へんなことは書かれておりません
酔っていらしても・・たぶん普段と変わらないとおもいます笑
by はなだ雲 (2019-11-24 12:53) 

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